三日目はなが~い水平歩道を歩く
10月10日(月)

頭がボーとした朝、食欲もあまりないが一番に並んで4:30朝食をいただく。

今日は宇奈月温泉まで下らなければならないので、食事を済ませ5時出発。
ヘッドライト使用は何年ぶりだろうか。長丁場なので気持ちを引き締めて、ライトの明かりを頼りに歩く。
ようやく明るくなってきたので、適当な所でモーニングコーヒーをいただく。
前方の大岩に,仙人温泉の文字が見えてきた。

30人程の小さな仙人温泉小屋、ちょっと立ち寄りたかったが人の気配が全くしないので通過する。時刻は6:30だ。朝食は4時から提供されるので、もうこの時間は宿泊者はいないのかも。

小屋から少し先の仙人谷を渡ると、山の斜面に白い噴煙が舞いあがっている。仙人湯の源泉だ。指を入れてみると結構熱い。


昨夜は夕暮の裏剱を見るために仙人池ヒュッテに泊まったが、あの混雑を考えると、ここでのんびり露天風呂に浸かっていた方がよかったかな・・・・
ここからは2007年に付け替えられた雲切新道を歩く。

遠くなる仙人温泉小屋を見下ろす。

P1629まで登ると後は仙人ダムの870mまで急降下だ。ハシゴ・ロープが多く、また切り株やむき出しの木の根も多くあり、登山道としてまだなじんでいないようだ。しかしこれだけの新道を付けられた労力には感謝しなければ。最後のハシゴを下る。

仙人谷を渡り、細い道をロープを頼りに進む。はるか下には黒部川だ。

次に待ちうけているのは複雑な ほぼ垂直な階段である。目がくらみそうで高度感はタップリだ。

8:55仙人ダム堰堤上に着く。振り向くと三段になった滝が・・・名前を聞いたが忘れてしまった。

関電の黒部専用鉄道が、黒部川を右岸から左岸に渡る。もちろん客扱いはしていない。

この路線は黒四地下発電所と欅平間6.5キロを結び、一日4便と不定期2便がほぼ2時間おきに運行されている。
オールトンネルで地上に顔を出すのはこの鉄橋部分のみ。
途中に(高熱隧道)と呼ばれる超高温区間があり、壁には硫黄が付着している。
機関車は安全のため蓄電池式で、人間の乗るトロッコも機関車同様耐熱構造になっている。
ヂーゼルだと燃料に引火の恐れがあり、電化だと硫黄が配線を腐食さすからだ。
年何回かの見学会があるそうで、競争率は2~3倍とか。一度乗って見たいものだ。
堰堤から登山道は関電の施設管理の建物内に入り、細い通路を進む。


約5分程で外に出た。外に出ると5階建ての大きなビルで、所どころ窓に明かりがついている。関電社員の宿舎も兼ねている。

再び道は登山道に変わり高度を上げ、970~980m当たりの等高線に沿って進む。途中に短いトンネルもある。下に建物が見えると急坂で下り、10:00阿曽原温泉小屋に着いた。

少し先にひろばがあるので、時間はは早いが食事にしよう。キャンプ場らしく、水道施設もある。

食事も終わった、さあ 名物の温泉でひと風呂、と思ったが・・・

10:40最終行程のなが~い水平歩道歩きに入る。ここの840mから970mまでひと登りすると、ほぼ等高線沿いの900mから1000mの間を上下しながら進む。岩壁をコ字型にくりぬいた細い道が続く。200~300m下には黒部川が流れているが,谷側は樹木が茂っているのでほとんど水面は見えず、恐怖感は余りない。
1時間ほど歩くと奥鐘山西壁が、目に飛び込んできた。ものすごい迫力だ。

黒部川に流れ込む谷が深く切れ込んでいるので、等高線沿いの道は谷に沿って曲がりくねっている。折尾谷
にかかる折尾の大滝。時刻はすでに12:15になっている。

面白いことに滝の下に堰堤があるが、登山道は堰堤の中をトンネルでくぐり抜けているのだ。
向こう側から入りこちらの出口へ。距離は短い。

道巾は70~80センチ位、昔のように横長のキスリングだと、危険と隣り合わせだろう。この水平歩道の歴史は古いが、黒部川上流に発電所を建設するため、その調査のために作られた道だ。

こんなスリル満点の所もある。


13:15 大太鼓と言われる撮影ポイント。


奥鐘山西壁。黒部の怪人と呼ばれ、日本最大級の岩壁。また黒部の三大岩壁の一つと言われている。

次の志合谷は150mのトンネルだ。手掘で内部で半円形に曲がって真っ暗。入った途端に天井の岩がゴロゴロ転がっており、よく見ると今にも落ちてきそうな岩もある。どうやら先日の地震で崩落したのだろうか。また天井や壁から水が流れ落ち、足許は岩と水ぜめだ。


谷の対岸から水平歩道を見る。


再びトンネルだがこれは短い。

右側の山が切れ、突然雪をかむった白い山が覗いた。白馬の杓子?西側から見るのは始めてでよくわからない。

少し歩くと景色は変わる。右のゴツゴツした険しい山並みは、不帰剣のようだ。欅平のアナウスの声が流れてきた。

歩くにつれ見える角度が変わってくる。高圧線が邪魔をするが、山名は想像で、こんなものかな?

欅平のアナウスの声が近くなってくる。行く手に鉄塔が見えてきた。鉄塔より高度250mのジグザグの急降下で15:45 大勢の観光客で賑わう欅平に無事おりてきた。10時間45分の歩行、どうもお疲れさまでした。


すぐ下は黒部の流れ。

どうしてもっと早い便に乗れないの、と大阪のおばちゃんになりきって交渉したけど、だめだった、と笑っている。Tさん倉敷の人だから、迫力がたりないんだ、なんちゃって。
宇奈月温泉から到着する列車。


駅の西側にある大きな駐車場に 回送していただいてる車へ。
18:30 駐車場出発。Tさんが、欅平で聞いてきたという帰り道にある温泉を探すが、暗くて看板がわからない。
時間も遅いし、列車の風の冷たさ で汗はとっくに引いているので、パスしよう。
黒部ICに18:45入る。途中のSAで豪華な夕食をとり、あと2回 の休憩で24:00姫路東ICを出る。
期待していた仙人池ヒュッテからの裏剱、あいにく視界悪くいまいちで、一番楽しみにしていた水平歩道からの紅葉の渓谷美は、まだまだ早すぎてダメだった。
山小屋の話では今年の紅葉は暖かすぎて遅れる、との事だ。
このロングコース、もう一日余裕を持て、ゆっくり景色を堪能しながら歩きたいものだ。
[参考データー]
10月8日(土)
山陽姫路東IC3:35(山陽・中国・名神・北陸道)立山IC8:00⇒県道3・6⇒立山駅8:30
バス立山発9:30⇒室堂着10:35
室堂出発10:40→雷鳥平キャンプ場11:20→(雷鳥坂で食事休憩20分)→剱御前小屋13:10→剣山荘14:15
10月9日(日)
剣山荘出発6:10→剱沢雪渓取付7:20→長次郎谷出合8:00~8:20→真砂沢ロッジ8:50~9:05→二股10:05~10:25→(仙人新道食事休憩35分)→仙人峠12:45~12:55→池の平小屋13:20~13:35→仙人峠14:00→仙人池ヒュッテ14:15
10月10日(月)
仙人池ヒュッテ出発5:00→仙人温泉小屋6:30→仙人温泉源泉6:40~6:50→仙人ダム8:55~9:05→阿曽原温泉小屋10:00~10:40→折尾の大滝12:15→志合谷トンネル入口13:30→欅平15:45
黒部渓谷鉄道欅平発17:04⇒宇奈月温泉着18:19
駐車場出発18:30⇒県道13・53⇒黒部IC18:45(北陸・名神・中国・山陽道)山陽姫路東IC24:00
(走行距離 約1020キロ 3日間の歩行距離 約35キロ 累積標高差 約2890m)
[信濃毎日新聞の記事]
今月に入って相次いだ北アルプス後立山連峰付近を震源とする地震の影響で、大町市が入山口となる黒部峡谷沿いの登山道が通行不能になっている。大量の残雪のためこの時期だけ通れ、断崖にへばりつくように付けた道を歩くのが人気の下ノ廊下(旧日電歩道)では大規模な斜面崩落や落石による事故も。黒部ダム上流でもあちこちで崩落や落石があり、復旧の見通しは立っていない。
登山道を整備している関西電力によると、下ノ廊下は仙人ダム~黒部ダム間約17キロの複数箇所で斜面崩落があり、黒部ダムなどの登山道入り口で通行禁止を告知している。
仙人ダム近くの阿曽原温泉小屋を経営する佐々木泉さん(51)によると、5~7日にかけて続いた地震後、ルート上には至る所に落石があったという。7日には新潟市の女性2人が落石を受けて死傷。高さ数十メートルの斜面が登山道もろとも崩れ落ちるのを目撃した登山客もいたといい、「こんなことは初めて」。客が見込めないため、今季は19日で小屋を閉めるという。
黒部ダムから湖沿いに上流に続く登山道(タンボ沢~東沢谷出合約15キロ)でも土砂や岩が崩れやすい状態で、5日から看板を出して注意喚起している。補修工事を請け負う大町市の建設会社社員が6日に巡視したところ、「あらゆる斜面から石が落ちている。登山道に亀裂が入った場所もあり危険」としている。

