No170 早すぎた紅葉と新雪の裏剱
10月8日(土) 室堂より剣山荘まで
今日は楽しみにしていた裏剱行き。当初の計画では3日~5日の予定だったが天気が悪く、8日~10日に変更したのだ。
ただ、昨日岡山の大空山~富栄山に登り、床に入ったのが22時。
今朝は2時起きだからやや睡眠不足気味。ザックに詰めかえたり 何やかんやでバタバタし3時に自宅を出る。
メンバーはサントリーの一人が用事のため3人で、3:25 Iさん宅を出発する。
今日は立山まで。長距離運転は得意とするところだが、何か忘れ物をしていないかが気になるところだ。
本日の目標は真砂沢ロッジなので、かなり急がなくっちゃ。山陽姫路東から高速に乗り、トイレ休憩は賤ケ岳SA・徳光PA の2か所で、立山ICを8時に降りる。 ちょっと飛ばしすぎたかな?県道3から6へ。
途中にあるアルペン村ツーリストの駐車場には沢山の車が並んでいる。3連休だから入山者は多そうだ。
今からだと9時の室堂行きがある。
8:30 立山に着いた。今回は宇奈月温泉まで車回送業者にお願いするので、踏切手前の事務所に入る。
10日引き取りで¥11.000円。他の業者よりここは安い。
係のおじさんの話では、先日降った雪が室堂あたりで5センチ位積もっている。また3日だったかの新潟地震で下の廊下、十字峡あたりで大規模な崩壊があり、死傷者が出て、現在通行止めになっている、など説明を受ける。
(帰宅後、富山県警のHPで確認すると、写真を見る限り登山道の50m程が崩落し、切り立った崖に登山道を付けるのは困難な状態に見える。下の廊下は永遠に通行止めになるか・・・)
キップ売り場に行くと、9時の直通バスがある。が、もう満席で次は9時半だ。ケーブルとバスに乗り継いでもそう変わらないとの事なので、それなら乗り換え不要の直通バスを約1時間待つことにした。
9時の直通バスを待つ行列。正面の3階建ては、2週間前の9/25に泊まった千寿荘。安くていい宿だ。
9:30 定刻にバスは発車。樹林帯を抜け弥陀ヶ原に出ると一気に大展望が広がる。新雪の山々は白く輝いてとっても美しい。しかし楽しみしていた弥陀ヶ原の紅葉は早すぎたようだ。
右に落差130mのソーメン滝が、左の大日岳への尾根の上に剱が、ほんのちょっと頭を出した。
室堂が近付いてくる。立山三山がキレイ!
観光客を避けながら、急ぎ足で進む。5時間もあれば真砂沢ロッジに着くので、そんなにあわてなくてもいいのだが、劍沢雪渓の状況がわからないので、つい速足になってしまう。地獄谷から流れてくる噴煙にせき込みながら、雷鳥沢キャンプ場を見下ろす高台に着く。夏とは比べようがないが、それでもかなりのテントが見られる。
前方にはにがてな雷鳥坂が待っている。
キャンプ場を過ぎ、称名川に架かる木橋を渡る。時刻は11:25だ。
さあいよいよ雷鳥坂だ。標高差約500m、石がゴロゴロした歩きにくい道は、稲妻を切っての直登で、変化がなく退屈してしまう。
お腹がすいたので途中でお昼を済ませ、13:10剱御前小舎に着いた。
順調にけば真砂沢ロッジには16時頃には着きそうだな、とその時ふと広場横の立看板が目についた。
[剱沢小屋は本日予約がないと泊れません]
嫌な予感がしてきた。予約をしていないだけに、40人規模の小さな真砂沢ロッジは大丈夫かな?
南ア等結構予約のいる小屋は予約を入れるのだが、北アは必ず泊れるという甘えがあったのは事実。とにかく急がなくっちゃ。足許に気をつけながら剣沢小屋への道を下る。
あいにく剱岳はガスの中だ。剣沢小屋が見えてきた。
富山県警山岳警備隊剱沢派出所野前を通りかかると、入口におられた若い隊員さんが「剱沢雪渓は一部危険な所がありますから、十分気をつけて下さいね」と話しかけてこられた。
「今日の泊りは真砂ですか?ずいぶん混んでいるようで、予約ない客は泊れないそうですよ」
「えっ、そうなんですか?」さて困った,どうしょう・・・「詳しいことは剣沢小屋で確認されたらいいでしょう」
隊員さんに礼を言って、剣沢小屋へ急ぐ。
「私ところと同じで、真砂さんは予約なしでは無理ですよ」受付のお兄さんのつれない言葉。
これで完全に予定が狂ってしまった。「剣山荘はどうですか?」と私。
「あちらは空いているはずです。劍は一般の登山客は雪と凍結で禁止になっていますから」
よかった、今夜は剣山荘に変更だ、助かった!
ついでに明日のために剱沢雪渓の状態を聞いておこう。コピーされた略図をいただき説明を受ける。雪渓は2か所、アイゼン着用だ。14:00 お礼を言って剣沢小屋を後にする。
剱岳は相変わらずガスが張り付いている。剣山荘が画像の左端に。
14:25 営業しているの?夏の喧噪はウソみたいに閑散とした剣山荘に着く。お盆からまだ2か月たらずで、まさかまたここにお世話になるとは思わなかった。
中に入ると受付・売店は閉まり、土間には雑多なものが所狭しと並んでいる。明日で営業は終わりなんだ。
受付を済ませ、まず衛星電話を借り、仙人ヒュッテに電話を入れる。今からだと布団一枚に2人になります、との返事。仙人池に浮かぶ裏剱を見るのが一つの目的だから、我慢するか。
部屋に案内される。8人部屋に私たち3人だけ。それにしても建物の中は底冷えするほど寒い!
もともと寒がりの私、今夜果たして眠られるだろうか、ふと心配になってくる。
せめてシャワーでぬくもりたいが、もう閉鎖したとのことだ。見かねたI・Tさん、余分に持ってきているパンスト、首巻き、暖かそうな手袋等を、貸してくださる。生まれてこの方女性用のパンストは始めて、無様な格好だ。
17:00夕食。数えてみるとそれでもざっと60人の宿泊者だ。
10月9日(日) 剣山荘より仙人池ヒュッテまで
4:30 お目覚めだ。寒さを心配していたが、目が覚めることもなく眠れたので快調な朝を迎える。問題は今夜だ。5:30朝食をいただく。
今日でこの小屋も冬眠だ。昨日の剱沢小屋の話では、剣山荘から剱沢雪渓に下る道は急で危険だから、もう一度剱沢小屋まで戻った方がいい、とのことだったが、こちらの人の話では全く問題ないとのこと。
6:10 剱沢雪渓に向け出発。朝の別山と左下は剣沢小屋。
剱沢小屋からの道と合流、剱沢小屋からの方が人の数は断然多い。7:20 いよいよ剱沢雪渓にさしかかる。正面には左五竜、右鹿島槍のシルエットが美しい。
雪渓の中に入るが、すぐに右の山の斜面に逃げる。振り返ると青空がとっても美しい。雪渓を下る登山者の姿は米粒のようだ。
平蔵谷。手前の岩は平蔵の大岩。この方向から見ると、単なる平凡な岩にすぎない。
ウヒャー、これはえらい所に出たぞ!クレパスを避けた巻き道。小屋で説明を受けた最大の難所だ。定員2~3名の15mの板。ロープがあり、山側に傾斜が付けられているのでまだ歩きよいが、急傾斜の岩肌がカッチンカッチンに凍って降り、恐怖感をあおる。はるか下には口を開いたクレパスが待っている。
ヘッピリ腰で渡り終えると、定員一人のアルミのハシゴだ。
一安心する暇もなく、次の難関が待っている。ロープで下降だが岩肌が凍結、足場がないのだ。左端の窪みに水が流れているので、この中に足を入れる以外に方法はない。ここが凍結すればお手上げだろう。
下の安全な場所に降り立って、お互いの無事を喜び合う、と言った心境だ。
しばらく下ると、右岸から左岸への雪渓横断だ。必ずアイゼン着用、と言われていたが、多くの人が歩いてい
るのでその必要はないようだ。写真の上部から下りてきて、水引パイプに沿って横断する。
雪渓を横断すると、写真右から長次郎雪渓が下ってくる。
長次郎雪渓上部は長次郎の頭?
もう危険な所は終わった、大きな岩の上でコーヒータイムにしよう。長次郎雪渓の上部は長次郎の頭?
20分ほど休憩して出発。8:30剱沢雪渓末端にきた。いよいよ雪渓もここで終わる。
流れに沿って下って行くと要塞のように石だ囲った真砂沢ロッジが見えてきた。
8:50 真砂沢ロッジ到着。場所柄定員40名の小さな小屋だが、ここも閉店準備で忙しそうだ。100円でトイレをお借りする。
9:25 木橋を渡って黒部ダム方面に至る分岐。
しばらくするとハシゴでガケに登り、足巾しかない狭い岩場をクサリを頼りに進む。
次に長いハシゴで河原に降りる。川幅は広く岩がゴロゴロしており方向を確認、やがて三ノ窓雪渓からの流れが剱沢と合流する二股吊橋を渡る。
10:05 渡り終えると大岩があり、大勢の人が一息つく休憩ポイントだ。三ノ窓雪渓を見上げる。左は八ツ峰の岩峰。お菓子休憩をとる。
10:20 本日の急登、標高差560mの仙人新道に取りつく。左五竜と右鹿島槍はすぐそこに見える。
今秋は冷え込みが少なく紅葉は遅れているが、仙人尾根はまずまず。
尾根の途中にベンチのある展望台があるが、大勢の人が休憩したり食事中だ。八ツ峰方面の展望が素晴らしい。左は三ノ窓雪渓と八ツ峰。右は小窓雪渓をはさんで池の平山。
11:40適当な場所がないので尾根上の少し広くなった道沿いで、お昼にする。鹿島槍はるか上空をジエット機が・・・
12:15 さあ出発だ。お腹がふくれると登りはしんどいものだ。
仙人山が見えてくる。
ようやく今夜の宿仙人池ヒュッテが見えてきた。バックには右の五竜から白馬にかけてのパノラマが広がっている。
12:45 仙人峠に着いた。左が二股から登ってきた仙人尾根で、仙人池ヒュッテは手前の桟道へ。池の平小屋は画面の上の道に入る。正面の山は池ノ平山。
往復1時間ほどだ。ところがTさん、疲れたので先に仙人池ヒュッテに行って待っているとおっしゃるので、ザックを置いてカラ荷でIさんと池の平小屋に向かう。
往復1時間ほどの距離だ。峠近くに多くのザックがおいてあるが、池の平方面に行かれたのだろう。
池の平小屋の下にある平の池が見えてきた。10人程のグループが池に向かって歩いている。
山を廻り込むと池の平小屋が現れる。池ノ平山がデカイ。剱岳までの北方稜線ルートの始点だが一般登山は入れない難コースだ。
30名程の小さな小屋だが、どことなくノンビリした雰囲気だ。しかしHPは充実した内容である。
今夜は15名でガラガラ、池の平ヒュッテは超満員 だろう・・・とおやじさん。
布団1枚に2人、こちらでもよかったな、と一瞬思うが、Tさんがすでに小屋に行ってる事だし、まあガマンするか・・・
小屋の前に風呂があった。おじさんが気持ちよさそうに入っている。どんな風呂か傍に寄って見る。
「いい湯かげんだよ、手を入れてみたら?」なるほどいい湯だ。「次がいないので入るのだったら上がるよ」
手ぶらなので入りたいけどガマンしよう。
小屋の前の草むらでIさんと話をしていると、下の平の池から返ってきた女性一行がお風呂に入りたい、とおやじさんに交渉している。
「女性が入りますので場所を移動してくれませんか」
仙人峠から桟道を、右の鹿島槍から五竜、唐松を眺めながらヒュッテに下る。
14:15 ヒュッテに着く。横に仙人池があり大勢の人の会話が流れてくる。
受付で部屋を確認、2階へ。狭い部屋だ。通常は6人部屋でフトンが6組ある。
ここに12人?途端に憂鬱になるが、ここは裏剱撮影の絶好のポイント、紅葉の時期は特に混むのだ。 Tさんの姿がないので仙人池に行ってみる。大勢の人だ。数名が三脚を立て八ツ峰に焦点を合わせている。まだ太陽の位置は高いが、ちょうど逆光になる。ガスが流れてきた。
池の周りはまだ緑が残っており、紅葉は早そうだ。
Tさんが三脚を立てたカメラマンと話しこんでいる。声をかけると、いささか興奮気味で「あの人、テントでもう1週間ここでシャッターチャンスを狙っているんだって。適当に雲がないとダメだし、紅葉が今一で、なかなかいい写真が撮れない、とボヤいているよ」
ようやく八ツ峰に陽が落ちたが明るさが残り、ガスは取れない。適当にシャッターを押すが、素人の悲しさだ。
おまけに左橋の1峰が欠けている。朝焼けの写真がほしいところだが、あいにく明日は早立ちだ。
こちらは1峰がはっきりと写っている。後は別山と立山?
夕食まで雑談していると、中年の単独行者が入ってこられた。「ここで12人も寝るんですか?」戸惑いの表情だ。
池の平小屋がガラガラの話をすると「ありがとう、じゃここを断って池の平小屋に行ってきます」と出て行かれた。
すぐに入れ替えに中年の単独行者が来られた。「ビールを飲んだらすぐ寝てしまいますが、そのビール、昼過ぎに売れてしまったそうで、ちょっと心配です」
そこでまた池の平の話を持ち出す。「今夜は15人でガラガラと言っていましたので、うまくするとまだビールがあるかもわかりませんよ」半ば冗談のつもりで言ったのだが
「それはいいこと聞きました。さっそく散歩がてらに行ってきます」往復1時間半程かかるが、時間よりビールなんだ。
飲めない私からすると、そこまでして飲みたいの?と思ってしまう。
さてどう寝るか?居あわせた人たちと話し合って寝る場所を決める。運悪く私の隣で横になって化眠していたのは単独の30歳代のよく肥えた男性だ。嫌な予感がする。壁際にTさんとIさんでその横が私だ。
食後 3人は入れるお風呂に。こんな山中でお風呂に入れるのはありがたい。但し宿泊者が多いので、のんびりは出来ない。
ビールを買いに池の平小屋に行かれた人が入ってこられた。
「サブザックにいっぱい買ってきましたよ。但し部屋に入って見ると私の寝る場所がないので、よその部屋に行きます」
嫌な予感が現実になる。隣の人の寝相がよろしくない。その上よく肥えているので喉が渇くのか、たびたび起き上がり水を飲む。あちこちでいびきや寝言、歯ぎしり・・・繊細な私にはつらい夜である。隣のIさんも眠れないようだ。
10月10日(月) 仙人池ヒュッテより欅平に続く