No120 四国100名山梶ケ森と高知県南大王の福寿草
去年4月、四国寒峰へYさんと福寿草を見に行ったが、その時会った高知の人が「高知にはここよりもっと規模の大きな群生地がありますよ、しかも平地です。開花はここよりかなり早いかな」 その言葉をYさんが覚えていて、そろそろじゃない?と電話が入る。
調べてみると、あった(南大王の福寿草祭り)多分これだろう。
2月6日からすでに始まっているが、今年は寒波の影響で開花が遅れ、3月13日まで延長する、とある。
但し福寿草だけで高知まではもったいないので近くの山を探すと、梶ケ森が見つかった。
地形図を見ると山頂に電波塔があるので道路が通じているが、登山コースが何本かあり、なかなかよさそうな山なのでこれに決定。
5日に綿向山に登ったので、6日の朝出発、日帰りの予定を立てていたが、Yさんから、急用が出来たので夕方6時頃までに帰りたいと連絡が入る。
大豊ICまで高速を走るので帰れないことはないだろうが、山の状況がわからないだけになんともいえない。
かといって来週まで延ばすと福寿草が終わりに近いし、じゃあ夜出発に変更しようか、ということになった。
綿向山からの帰宅が18.30。そのままの格好ですぐYさんを乗せて出発。なんともあわただしいことだ。
善通寺で宿を確保したもののとうとう食事抜きになってしまう。
6日は真っ暗な5時過ぎに出発。大豊ICで降り、R32を10キロあまり北に向かって引き返してR439に入る。
狭いカーブの連続した道だ。この国道は奥祖谷峡から剣山見の越に至る。
5分ほど走ると案内看板がある。
ここからが大変。車1台分の細い曲がりくねった道は分岐が多い。道標があるので迷う事はないが、Yさんに運転を任せ地形図を見ていても、山の斜面を南に北に行ったり来たり、また枝道が多く、なかなか現在位置がつかめない。
6:40 やっと福寿草の里の駐車場に着く。車は1台もいない。ふと気が付いたが、福寿草は日が当らないと咲かないのでは?
係のおじさんの姿を見つけ尋ねると「えらい早いね。そう、ここは山の西斜面だから9~10時頃にならないと咲かないよ」
先に梶ケ森に行こうとUターン。来た道の途中から道標に案内され山に向かって登る。
またこの道も狭く曲がりくねってどんどん山に入って行く。予定では龍王の滝の駐車場まで入り、そこから山頂まで歩いて登る。と、順調に走ってきたが ありゃりゃ 行く手に凍結路が待っているやんか。
昨日の綿向からチエーンを積んだままだが、邪魔くさいし不慣れで時間がかかるので歩こう、という話になった。7:10通行の邪魔にならないように路肩に駐車し、テクテク歩きスタート。
ざっと駐車場まで1.2キロ程の距離だ。
7:40 龍王の滝の入り口が見えてきた。舗装町道はこのまま山頂に向かうが、私たちはここから山道に入る。
広い駐車場にはガランとしている。案内板がある。右の真名井滝、小天狗経由で登ろうか。
植林の薄暗い道は、除々に雪が多くなってくる。
7:50 龍王の滝が見えてきた。
滝の上部の橋を渡ると、この先谷はグッと広がってくる。適当な所を選んで登って行くと
8:10前方に大きな建物が見えてきた。
常福寺奥の院だ。上下にお堂が二つあり、渡り廊下は波板で囲ってある。
傍に立つ案内板。Aコースを歩く。
少し登ると凍結した滝に出た。真名井の滝のようだが足場が悪く、傍まで近づけない。
登るにつれ雪が深くなり、時々道がわからなくなる。しかし谷が狭まってきたので迷う事はない。
鉄ハシゴが見えてきた。
登るとさらに次のハシゴが待っている。急斜面を一気にハシゴで登りきる。
8:35シャクナゲの森分岐に着いた。目指すは右、天狗の鼻経由山頂だ。このあたりはシャクナゲの木が多い。
うっそうとした自然林から灌木地帯に植生が変わり、急に明るくなった。笹も目立つようになる。所どころ雪の下から階段が覗いている。重苦しい雰囲気がとれ、爽快な解放的な気分に変わる。
道標らしき頭が見えたので雪を払うと、1000段の文字が・・・雪の下は階段なんだ。しかしほとんどが雪に埋もれているので階段を歩いた実感がない。しかしこの階段、スタートはどこだったのだろう?
8:50小高い岩の上に石仏が見える。あの岩場が天狗の鼻かな?
梶ケ森と天狗の鼻は地続きに見えるが、深く切れ込んだガケになっている。
あの岩の突起が見る方向によって天狗に見えるのだ。右上に石仏が見える。
梶ケ森と天狗の間の深く切れ込んだ谷。
キャンプ場を見る。
キャンプ場の案内図。Yさん曰く「帰りは距離が長そうだけど、安全な車道から帰ろう、登りの道は危ないわ」
もちろん私も賛成だ。
1300段を通過。所々に雪の下から覗いている階段、段差は低いので普通の山道を歩いている感覚で歩けそうだ。
頂上はすぐそこだ。
9:10 頂上に到着! 駐車地点からちょうど2時間 、しかしもっと歩いたような気がする。変化に富んだ道だったな~
傍に文字の禿げた1399段の標柱が立っている。
私「あと一段増やしてキリのいい1400段にしたらいいのになあ」 Yさん「ちがうやん、これは山の標高に合わせてるんや」
そうか、梶ケ森の標高は1399.6m。「なるほどな~、あなたは頭ええわ」と感心する。
「山頂に立つ中途半端な数字、何かあるな、とカンを働かさないとアカンで」
「えらいすんまへん、ボケが入り、カンもにぶってまんねん」
大きな山名標示板の中心に何やら書かれているが、読めないので失礼して飛び上がる。
東の剣山から西の石鎚山までの四国山地のほとんどが見渡せる、大展望台だ。しかしあいにく雲が低く垂れこめている。
優しい表情の石仏。
肉眼では太平洋が見えるが・・・
山荘梶ケ森。
雲行きは怪しいが風もなく比較的暖かい。コーヒーでも飲みながらのんびりしたい所だが、あいにく全くの手ぶらで登ってきている。大失敗だ。
大豊ICで降りてからコンビニで食糧を仕入れるつもりが、なんとR32・439とも15キロほどの間に一件の店もなし。
昨夕、綿向山帰りに山陽道三木SAでうどんを食べたあと、何も食べていない。
しかし幸いにも2人とも食が細く、空腹感はない。
「遭難したら、中高年の無謀登山、とたたかれるで~」とYさん。違いない。
もうひとつ心配なのは空模様。西の石鎚山あたりまで黒く低い乱層雲が迫ってきているが、雨具も持ってきていない。下り坂がわかっているのに、初歩的なミスである。
9:40 展望を楽しんだので、さあ雨にならないうちに下山しよう。
山肌の茶色く見える所はすべて数軒の民家がある。平地の少ない四国独特の光景だ。
帰りは距離が長くなるが、安全を見て町道を下る。日陰はタップリの雪だ。
9:55山荘梶ケ森前通過。天文台が併設されている。12~3月は休業のはずだが車が止まっている。誰かいるのかな?
通り過ぎようとしたところレストランの入口から人が出てきた。よく見ると台所らしき所に電灯がともり、人の陰もガラスに映っている。
「お金持ってきている?」コーヒーが飲みたくなってきたし、急にお腹もすいてきたのでYさんに尋ねる。「No」Yさんのつれない返事が返ってくる。
仕方ないな、と諦めて歩きかけたが、念のためにポケットを探ると、何やら手に触れた。取り出すと、なんと1000円札が2枚!
「いらっしゃいませ」ドアを開けると数名の声が返ってきた。ああ助かった、何か食えるぞ!
メニューを見る。山菜丼¥750とYさんは山菜うどん¥550を注文。
「下の方に姫路ナンバーの車が停まっていたけど、もしかしておたくさん?」御主人の問いにうなずくと「この先下の方もまだ雪が多いので、四駆でないとむずかしいから、あそこで賢明ですよ。それで山道を登ってきたんですか?、雪が多くて大変だったでしょう」話好きな御主人と会話が弾む。
ここは町の経営で、天文台は宿泊者のみ。しかしガスがかかりやすく雨も多いので、観測可能な日は年間90日程ほど。口径60㎝の反射望遠鏡で土星の環や木製の縞模様も見えるそう。
夏場は花が多く、かなりの人が訪れるそうだ。そういえば壁には季節の花の写真でいっぱい飾ってある。きょうは2組の宿泊者があるとのこと。
「今度は是非泊りで来てください。一泊二食¥7650ですから」の声に送られ、山荘をあとにする。
10:35 なが~い舗装道路歩きが始まる。
所どころ深い雪が積もっている。途中男女4人ずれが登ってきた。初めて会う登山者だ。
手ぶらの私たちを見て「どちらから?」と女性が尋ねてこられた。
「龍王の滝の方からです」「えつ、あのきついコースですか、雪が多かったでしょう?」
5分ほど歩いていると、男性が一人登ってこられた。かなりのお歳である。12本アイゼンにピッケル姿は、所どころアスファルトが覗いている舗装道路にはオーバーだ。
「昔の男前です。4人ずれに会いましたか?」面白い自己紹介だ。5人で来たけど足が遅いので、先に行ってもらった、とおっしゃる。
11:15 龍王の滝駐車場に戻ってきた。車が2台停まっている。
1台は5人グループで、あと1台は滝の方に行かれたのだろう。
11:35 山荘からちょうど1時間、やっと駐車地点に到着する。と同時にポツリポツリと雨が降ってきた。
11:40 雨だが山に登るのではないので福寿草は見ておこう、と出発。
再び車一台程の細い道をカーブを繰り返しながら、駐車地点の740mあたりから390mの南大王川に架かる橋まで下ると、すぐに550mあたりの福寿草の里に向かって登りだ。
途中から南大王川の向こうの、下ってきた方向を見る。棚田が広がるなかなか美しい風景だ。しかし生活する人にとっては不自由な環境だろうな。
途中の道路の膨らみで交通整理にぶつかった。道が狭いので福寿草シーズンは一方通行にしているらしい。
12:05 駐車場に着いた。ここから見上げる範囲ではどこに咲いているの?だ。
相変わらず小雨が降っているので,傘をさしての見物だ。受付で施設整備金¥300を支払い、一歩足を踏み入れると、すぐに朝は蕾だった福寿草が一斉に開いている。
段々になった田圃の斜面やあぜ道にところかまわずず咲いている。順路を設けているが、途中に民家もあり、家の横に咲いている光景は、まるでタンポポのようだ。
登りきった所に無料休憩所兼食堂がある。
山荘梶ケ森で食事をいただき、お腹は大きいので無料のお茶をいただく。
順路に従って一回りして駐車場に戻ってきた。人家の傍に咲いているが栽培ではなく、自然に咲いている花を大切に保護をしておられるそうだが、すっかり観光地になっている。
関西の藤原岳や霊仙山、そしてここからほど近い寒峰にしろ、山に登らなければ見る事が出来ないだけに、チョッピリ違和感を覚える。
12:45 帰途に着く。まだ時間は早いので大豊ICの少し高知寄りに、日本一の大杉があるので寄ってみよう。
R32の大豊IC入口より1キロ程南に行くと「道の駅大杉」があり、右に入る道がある。入り口に大きな看板がある。
13:05 少し坂を登ると八坂神社のPがある。神社境内に日本一の大杉があるのだが、中に入るには私設整備協力金¥200がいる。Yさんも私もお金を払ってまで見る気はないので、どんな所か話のタネに立寄って見ただけだ。
日本一の杉の大杉とは、スサノオノミコトが植えたと伝えられ、樹齢約3000年。南大杉と北大杉にわかれ夫婦杉とも言われている。
南大杉は周囲20mで高さ60m、北大杉が周囲16.5m高さ57mで国の天然記念物に指定されている。
しかし何故ここに”美空ひばりが登場するの?と不思議に思って調べてみると、昔まだ美空和江と名乗っていた頃、地方巡業でこの大杉を通りかかりバス事故にあった。しかし幸いにも九死に一生を得る事が出来た。
1ケ月半の療養の後、町内の杉の大杉に「日本一の歌手になれますように・・・」と願いをかけたそうだ。
その後美空ひばり改名、大歌手になるのだが、この大杉に願いをかけた事から、美空ひばりゆかりの地となっている。そして大杉の傍に遺影碑と歌碑が建てられているそうだ。
神社の階段下から奥を覗くが、当然奥は見えない。下の道路から見える、この大杉じゃないだろうな?
13:35道の駅大杉に立ち寄ったあと、ノンストップで15:50自宅に帰ってきた。